伊豆大島の葬儀のしきたり② ― 通夜の受付は男が務める ―
- ふゆき葬祭
- 10月2日
- 読了時間: 3分
伊豆大島には、古くから伝わる独特の葬儀の習慣が今も数多く残っています。
その中でも、島外の方が驚かれるのが「通夜の受付に立つのは男性でなければならない」というしきたりです。
都会の葬儀では男女を問わず受付を担当することが多いので、「なぜ男だけ?」と感じる方もいるかもしれません。
今回は、この背景と意味合いを少し掘り下げてご紹介します。

通夜の受付とは
通夜の受付は、参列者を迎え、香典を受け取り、記帳をお願いする場です。言わば、葬儀の最初に訪れる「顔」となる役割を持っています。
遺族を代表して弔問客を迎えるため、非常に大切な立ち位置です。
伊豆大島では、昔からこの受付には必ず男性が立つことが決まりごとのように守られてきました。
男性でなければならない理由
明確な文書記録が残っているわけではありませんが、いくつかの理由が考えられます。
家の代表としての役割
昔は「家」を代表するのは男性であると考えられていました。葬儀に来るのは親戚や近隣の人々、さらには仕事関係の人々など。受付は家そのものの「窓口」であり、その重責を男が担うのが当然だと見なされていたのです。
金銭のやり取りの重み
香典を受け取る場でもある受付は、お金を扱う場所です。かつては「金銭にまつわる責任は男が負う」という価値観が強く、それがしきたりとして残ったとされています。
儀式的な“けじめ”
島では葬儀そのものが「家のけじめ」として扱われていました。通夜の受付を男性が務めることは、家がきちんと責任を果たしている証とされ、弔問客にも安心感を与える意味があったといわれています。
現代から見ると
現代では女性が社会で大きな役割を果たしているのは当然であり、都会では女性が受付に立つことも一般的です。そのため、島外から来た方は「なぜ?」と違和感を持つこともあるかもしれません。
しかし、大島の人々にとっては、単なる性別の問題ではなく「家の代表は誰か」という古い価値観の名残りなのです。
今も多くの家庭でこのしきたりは自然と守られており、受付に男性が立つと「やっぱりこれが大島の通夜だな」と安心感を覚える方も少なくありません。

変わりつつある風景
とはいえ、時代の流れとともに変化もあります。身近に男性がいない家庭や、どうしても都合がつかない場合には女性が受付を務めることも増えてきました。
島の人々も柔軟に受け止めるようになりつつありますが、それでも「本来なら男が立つもの」という意識は強く残っています。
つまり、このしきたりは「絶対に破ってはいけないルール」ではなく、「守ることで島の人々が安心する伝統」として受け継がれているのです。
まとめ
伊豆大島のしきたり「通夜の受付は男性が務める」という習慣は、古い時代の価値観から生まれたものです。家の代表、金銭を扱う責任、そしてけじめ。そうした理由が重なり合い、今もなお島の通夜の場に息づいていると考えられます。
ふゆき葬祭では、このような島独特の習慣を大切にしながらも、現代のご事情に合わせた柔軟なご案内を心がけています。しきたりを尊重しつつ、ご遺族の想いを第一に――それが私たちの役割です。

