伊豆大島の葬儀のしきたり① ― 枕経が終わるまでお線香はあげない ―
- ふゆき葬祭
- 10月2日
- 読了時間: 2分
伊豆大島には、昔から伝わる独特の葬送の習慣がいくつもあります。
島外の方が耳にすると「えっ、そうなの?」と驚かれることもしばしば。
そのひとつが「枕経が終わるまでお線香をあげてはいけない」というしきたりです。
今回は、この風習の意味や背景についてご紹介します。

枕経とは?
「枕経(まくらぎょう)」とは、亡くなった方が安置された直後にお坊さんに来てもらい、最初にあげていただくお経のことです。
まだ通夜や葬儀の前、まさに“死の直後”に行われるお勤めであり、故人の魂を導く大切な時間とされています。
この枕経が終わるまでは、遺族も参列者もお線香をあげることを控える。
これが大島のしきたりです。
なぜお線香を待つのか?
お線香には、故人に対して「安らかにお眠りください」という祈りを込める意味があります。
しかし、枕経の前はまだ“魂の位置”が定まっていないと考えられてきました。
島の言葉で言うなら、「まだ旅支度の途中」ということです。
僧侶による枕経で、はじめて故人の魂が落ち着き、旅立ちの準備が整う。だからこそ、その前に線香をあげるのは順序を乱すこととされ、昔から慎まれてきたのです。

島の人々の感覚
この習慣には、宗教的な意味合いだけでなく「秩序を守る」という共同体の意識も込められています。
島の葬儀は昔から近所や親族が一丸となって行うもので、誰もが同じ作法を守ることで“安心感”が生まれます。
お坊さんが到着して枕経をあげ、合掌ののちに線香を手向ける。その流れこそが、島の人々にとって「正しい別れ方」だったのです。
今も残るしきたり
現代では病院で亡くなる方が多く、都会と同じようにすぐに線香をあげてしまう場面もあります。それでも、大島のご家庭では「まず枕経を待つ」という意識が根強く残っています。
「昔からそうしてきたから」だけではなく、「ちゃんと送ってあげたい」という想いの表れなのだと思います。お線香ひとつにしても、順序を大切にする心がある。それが伊豆大島らしい温かさです。
まとめ
伊豆大島のしきたり「枕経が終わるまで線香をあげない」という決まりは、故人の魂を敬い、共同体の秩序を守ってきた証でもあります。
小さな習慣のようでいて、そこには大切な人を正しく見送りたいという気持ちが込められています。
ふゆき葬祭では、こうした島の伝統を尊重しつつ、現代の事情に合わせた葬儀のお手伝いをしています。「しきたりは守りたいけれど、どうしていいかわからない」そんな時も安心してご相談ください。

